海外の5G動向【2021年8月度】
NTTは先日、グローバルに利用できる世界初のローカルLTE/5G NaaS(Network-as-a-Service)プラットフォームである「NTT’s Private 5G platform(P5G)」の提供を開始したことを発表した。クラウドネイティブなアーキテクチャで動作するこのプラットフォームは、クラウド、オンプレミス、またはエッジでの提供が可能で、主要なネットワーク/ソフトウェアパートナーとあらかじめ統合されているため、企業はネットワークの保護や拡張、セグメント化を柔軟に行うことができるという。先ごろNTTの新規事業・イノベーション担当EVPに就任したShahid Ahmed氏は新たなプラットフォームについて「グローバル企業は複数の国で展開できる単一のローカル5Gソリューションを求めている」とした上で、「NTTのP5Gは今日のCxOの多くの要求に応えるもの」と説明している。このような形で、日本の5Gオペレータが、海外のプライベート5Gを支援するビジネスは今後、少しずつ増えていくものと予想される。
以下、8月の海外の5G情報をお伝えする。
AT&T、テネシー大キャンパスにミリ波5Gのテストベッドを設置【Fierce Wireless 8/17】
米通信大手のAT&Tは、テネシー大学にミリ波帯を活用した5Gテストベッドを設置し、農村地域やデジタル学習体験、軍事用途などの5Gユースケースを検討するという。同社は2021年秋までにテネシー大ノックスビル校にローカル5G網を配備する予定で、学生向けにはAR/VR技術や生体情報を利用した学習体験の拡張・パーソナライズ化などにこのネットワークを活用するという。
原文:AT&T turns up mmWave 5G testbed at UT campus
LG、テラヘルツ帯を使用した6Gデータ送信のデモに成功【The Korea Bizwire 8/19】
韓国のLG電子は現地時間8月19日、テラヘルツ帯を使用した6Gデータ通信の実験に成功したことを発表。ベルリンでフラウンホーファー研究機構との協力で実施されたこの実験では、屋外環境で155〜175Ghzの周波数の無線通信信号を100メートル送受信することに成功したという。LGは2029年に6G通信の商用化を見込んでおり、2025年に標準化の議論が始まるとしている。
原文:LG Successfully Demos 6G Data Transmission Using Terahertz Spectrum
ABIリサーチ「ドイツでローカル無線網への関心は薄れつつある」【Fierce Wireless 8/19】
米調査会社のABIリサーチが、ドイツ企業のローカル無線網への関心が薄れつつあるとする見解を示している。ドイツ連邦ネットワーク庁(Bundesnetzagentur)によれば、2020年下半期のドイツにおけるローカル無線網の新規免許申請は80件以上あったものの、この数字は2021年第2四半期に20件しか増えていないという。同調査会社によれば、ドイツにおけるローカル無線網の大半はシステムインテグレータやベンダーが5G製品を紹介するために配備したもので、今のところ企業のワークフローやオペレーション強化のために活用されているローカル無線網はわずかだという。
原文:ABI Research is downbeat on private networks in Germany
Federated Wireless、CBRS帯を利用したローカル5G網の実証実験に成功【The Fast Mode 8/11】
米通信事業者のFederated Wirelessは先ごろ、米国防総省傘下の米海兵隊のアルバニー基地5Gテストベッドにおいて、倉庫ロボットやホログラフィック、AR/VRなどの5Gを活用したIoTアプリケーションの実証実験に成功。米海兵隊オペレーションの近代化を目指して実施された今回のデモでは、3.5GHzのCBRS帯と37GHz帯を利用したスマート倉庫テクノロジーを試作するために1200万ドルが投じられていた。
原文:Federated Wireless Demo $12 Million 5G Private Network Pilot Using Shared Spectrum
規制の逆風を受けながらもローカル5Gの成長を牽引する中国【Telecoms 8/3】
英調査会社Rethink Technology Researchに属するRAN Researchの最新報告書によれば、世界のローカル5G関連機器の年間売上高は2021年に15億ドルとなり、2027年には193億ドルに達すると見積もられている。また、2028年までに世界全体で配備されるローカル5G網の数は2660万に達し、中でも米国・ドイツ・中国・日本がローカル5Gの成長を牽引するという。同報告書は国有の通信事業者が市場を支配する中国でローカル5Gに強い規制上の逆風があることを指摘しつつ、地方の自治体や企業からの強い需要によって同国でエンタープライズ向けローカル5Gが急成長すると予測している。
原文:China to drive private 5G network growth despite regulatory headwind–research
T-モバイル、5Gを活用した産業用ロボットの遠隔操作でSarcos Roboticsと提携【Fierce Wireless 8/5】
米通信大手のT-モバイルは、産業用ロボットへの5G機能の統合で現地のSarcos Roboticsと提携。両社は危険な場所や有害な環境において作業を行う「Guardian XT」と呼ばれるロボットシステムのリモートビュー機能や遠隔操作に5Gを活用する。人間の上半身の外骨格を模したこのロボットは航空宇宙や自動車、建設、防衛、製造、海事、石油・ガスなど様々な産業に活用できるという。
原文:T-Mobile brings 5G to Sarcos industrial robot for remote viewing, operation
プレイベート5Gの経済効果、英製造業では2030年までに約880億ドル規模に【Total Telecom 7/28】
英ボーダフォンは新たな報告書「Powering Up Manufacturing, Levelling Up Britain」の中で、5Gを活用したスマート製造プロセスが英製造業界にもたらす経済効果について、2030年までに約880億ドル規模になるとの見積もりを出している。特に、この「インダストリー4.0」化を牽引するのはローカル5G技術だといい、同報告書は中でも遠隔でのコラボレーションを促進するARやVRなどのアプリケーションの役割を強調している。
原文:5G private networks worth £6.3bn to UK manufacturing by 2030
Inmarsat、衛星と5Gを組み合わせた新たなネットワークを提供へ【Fierce Wireless 8/2】
英衛星通信企業のInmarsatは先ごろ、自社の静止衛星と新たな地球低軌道衛星、地上の5Gを組み合わせたこれまでにない通信網の構築計画を発表。同社が「Orchestra」と呼ぶこのネットワークは海自や航空、防衛などの分野で高速通信へのアクセスが困難な拠点を持つ顧客に向けたものとなるという。
原文:Inmarsat combines satellite and 5G for new type of network
エリクソン、逆風が吹く中国で新たな5G設備契約を獲得【Reuters 8/2】
スウェーデンのエリクソンが先ごろ、中国通信大手のチャイナ・テレコムおよびチャイナ・ユニコムとの共同5G設備契約でシェアの3%を獲得したとする情報筋の話をReutersが報道。エリクソンは、スウェーデン政府が中国製通信機器の使用を禁止した影響で中国でのシェアを失う可能性が懸念されており、現地通信最大手のチャイナ・モバイルの5G設備契約に占めるシェアも昨年11%から2%まで減少していた。