海外の5G動向【2022年10月度】
基地局における無線通信処理を担うRAN(radio access network)のオープン化の動きが国内外で活性化している。RANは携帯電話などの端末とバックボーンを結ぶ無線通信ネットワーク。端末との通信を担うRU(Radio Unit)と、無線信号処理のDU(Distributed Unit)、そしてコアネットワークにデータを渡すCU(Central Unit)から構成される。今までのRANは、RU・DU・CUを全て同じベンダーのもので揃えるのが普通だったが、これは携帯電話会社(operator)自体がベンダーロックインされてしまう理由になっており、最適なネットワークを構築できるとは限らない。これをオープンな仕様にするのがOpen RANだ。インタフェースを共通化し、異なるベンダーの機器を相互接続・運用できるようにすることで、携帯電話会社自身が場所の状況に応じた適切な機器を選び、ネットワークを構築できるようになる。
以下、2022年10月の世界の5G・ローカル5Gの動向をお伝えする
ボーダフォン、ドイツでの5G Open RANの商用パイロットテスト計画を発表【telecomtv 10/25 】
ボーダフォンは10月25日、ドイツのバイエルン州およびニーダーザクセン州の農村地域で5G Open RANの実証実験を行うと発表した。今年初めにザクセン州プラウエンで実施したフィールドテストの成功を受けた動きで、2023年初旬に開始する。実証実験が行われるのは、欧州の大手通信事業者からなるOpen RAN MoUグループがまとめたロードマップおよび仕様に完全に準拠したOpen RAN技術となる見込み。ソフトウェアおよび無線機器についてはサムスンが提供する。このOpen RANシステムは複数事業者間の相互運用・接続が可能なシステムとしてはドイツ初になるという。2030年までに欧州の全拠点の30%で同技術の導入を目指している。
原文:https://www.vodafone.com/news/technology/open-ran-commercial-pilot-germany
原文:https://www.rcrwireless.com/20221026/open_ran/vodafone-pilots-5g-open-ran-at-german-cell-sites
サムスン、NTT東日本のローカル5G商用サービス拡大を支援 【 enterpriseiotinsights 10/20 】
韓国サムスンは10月19日、NTT東日本のローカル5G商用サービス拡大に自社のネットワークソリューションが採用されていると発表した。NTT東日本はサムスンのクラウドネイティブ5Gマクロコアや無線アクセスネットワーク(RAN)などの通信機器を活用し、日本国内の幅広い業界の企業に向けて多様なユースケースを提供していくという。帯域としては4.5GHz帯(4.4~4.9GHz)をサポートする。製造現場の作業効率を高める自律走行車(AGV)、スマート農業を支援する自動運転トラクター、eスポーツ体験を高めるマルチアングルライブ配信、建設現場でのウェアラブルカメラを使用したAIベースの外観検査システムなどがユースケースとして挙げられている。
ノキア、EUの6Gプロジェクト「Hexa-X-II」を主導へ 【 capacitymedia 10/7 】
フィンランドのノキアは10月7日、欧州連合(EU)の6G研究プロジェクトの第2フェーズである「Hexa-X-II」のプロジェクトリーダーを務めることを発表した。2021年1月に開始された第1フェーズ「Hexa-X」に続いてEUの6Gプロジェクトを牽引し、6G標準化のための技術的基盤の開発に取り組むということになる。資金は欧州委員会が拠出している。テクノロジー・イネーブラーに焦点を当てた「Hexa-X」に対し「Hexa-X-Ⅱ」はプレ標準化されたプラットフォームとシステム全体図の作成に注力するようだ。すでに44の組織がパートナーとして参加。エリクソンがテクニカル・マネージャーを務め、Orange、Telecom Italia、ドレスデン工科大学、オウル大学、IMEC、Atosなどが様々なワークパッケージの調整を支援する。
原文:https://www.fiercewireless.com/tech/nokia-takes-lead-europes-next-6g-initiative
インドのタタ・コミュニケーションズ、プネーにプライベート5G中核研究拠点を開設 【 enterpriseiotinsights 10/3 】
インド通信大手のタタ・コミュニケーションズは西部のプネーに新たなプライベート5G中核研究拠点(center of excellence、CoE)を立ち上げると発表した。エンタープライズ向けのインダストリー4.0アプリケーションやその機能の研究を加速させる狙い。新拠点は様々な業界のローカル5Gユースケースをテストするための屋内施設だ。自動車や金属・工業、空港・港湾、製造、物流、医療などの業界に向けたユースケースに加え、ビデオや画像解析を用いた機器の自動品質検査、在庫管理およびアセットトラッキング、倉庫の盗難検知、AR/VRによるリモートワーカーのコラボレーションなど、様々なプライベート5Gユースケースが実証可能になる見込み。
原文:https://enterpriseiotinsights.com/20221003/5g/tata-communications-opens-private-5g-center-india
ラスベガス市、米国最大のローカル5G網構築でNTTと協力【 computerweekly 10/1 】
米ネバダ州ラスベガス市は2018年からNTTとスマートシティ分野での協力を開始している。市内の安全性の向上や交通渋滞の改善、逆走運転の防止などを目指し、センサーやIoT、ビッグデータ、予測分析などを用いた「NTT Smart Solutions」を導入していた。その後、2020年にはこの取り組みをさらに強化し、市の「スマートパーク事業」の一環として、公園などの施設の安全状態や保全状況をリアルタイムで把握可能にするなど、市民や観光客の安全性や快適性の向上に注力していた。今回発表した新たなプロジェクトでは、NTTがパートナー企業と連携し、ラスベガス全域のネットワークアクセスポイント数を2倍以上に増強する。従来のCBRS(Citizens Broadband Radio Service:市民ブロードバンド無線サービス)を活用したプライベート5G網はビルやプラントなど屋内をカバーするケースが多いものの、同プロジェクトでは公共スペース全体にネットワークを拡張するという。