海外の5G動向【2022年12月度】

5Gに関連した最先端技術開発の中心は、その次の世代の Beyond 5G(いわゆる6G)に移行したが、アプローチは地域によって微妙に異なる。日本では2030 年頃に見込まれる Beyond 5G 導入までの取組を「先行的取組フェーズ」と「取組の加速化フェーズ」に分け、特に「先行的取組フェーズ」におけるBeyond 5G ready な環境づくりに向けた成功のモデルケースを多数創出することを狙っている。一方、欧州では6Gの研究開発の基本軸を設定し、それに沿ったホワイトペーパーや研究開発・基本特許の取得を堅実に進めている。また米国は、政府よりは民間企業や大学が中心となっているのが特徴で、各種の団体が複数の意欲的なテストベッドを構築しようとしている印象だ。いずれにしても5Gの普及期と比較し、ユースケースや目的が明確化し、大規模な社会インフラを想定している点は共通している、と言えるだろう。

以下、2022年12月の世界の5G・ローカル5G(および6G)の動向をお伝えする。


仏通信規制当局、新たな5Gユースケースのテスト向けに25件のプライベート5Gライセンスを付与【enterpriseiotinsights 12/21】

Arcep(仏通信規制当局)は去る2022年3月、新たな5Gユースケースの実験・検証を希望するメーカーや市場関係者向けに、3.8~4.0GHz帯のトライアルプラットフォームを開設したが、25件のトライアル向けプライベート5Gライセンスを国内の事業者に付与したことを12月19日に発表した。製造業、エネルギー、ヘルスケアなど多様な業界の事業者が国内の複数の地域でトライアルを実施しているという。Enterprise IoT Insightsによれば、現地の携帯通信事業者のOrangeやBouygues Telecom、NTTや傘下のTransatel、電気機器メーカーのSchneider Electric、研究機関のCEA(原子力・代替エネルギー庁)、電力会社のEDFなどがこのライセンスを活用したテストを実施しているという。Arcepはトライアルプラットフォームについて「成功を収めている」と言及している。また、同プラットフォームの利用可能期間を2023年12月31日まで延長し、さらなるトライアルを可能にすることも明かした。

原文:https://en.arcep.fr/news/press-releases/view/n/5g-191222.html

原文:https://enterpriseiotinsights.com/20221221/private-networks/french-regulator-arcep-awards-25-private-5g-licenses

英政府、5G/6G研究支援に約180億円を投入 【rcrwireless 12/16】

英国政府は現地時間12月13日、5Gおよび6G技術や通信セキュリティの研究開発支援に1億1,000万ポンド(約180億円)を投じることを発表した。このうち2,800万ポンド(約45億円)はヨーク大学とブリストル大学、サリー大学の研究に活用される。3校はノキア、エリクソン、サムスンと協力し、6Gなど、標準化されていない将来のネットワークの設計や構築に取り組むという。一方、ウェスト・ミッドランズ州のソリフルに建設中の新たな研究拠点「UK Telecoms Lab」にも8,000万ポンド(約130億円)が投じられる。この拠点では、5Gや将来の6Gのセキュリティ対策に関する研究やテストが実施される見込み。また、英政府は韓国との新たな研究開発パートナーシップも開始。このプロジェクトは、Open RANや関連技術の展開加速を目的としたもので、特にOpen RAN普及の障害の1つとなっているネットワーク機器の電力効率にフォーカスするという。同プロジェクトには、英政府からの120万ポンドを含む300万ポンド以上が投じられる見込みとなっている。

原文:https://www.rcrwireless.com/20221216/5g/uk-dedicates-funds-to-5g-6g-rd-industry-collaborations

原文:https://www.gov.uk/government/news/uk-to-accelerate-research-on-5g-and-6g-technology-as-part-of-110-million-telecoms-r-and-d-package

原文:https://www.telecomtv.com/content/6g/uk-government-pumps-110m-into-5g-6g-r-d-46205/

ノキア、パリ・メトロのプライベート5G契約を獲得【datacenterdynamics 12/08】

ノキアは、パリ地下鉄網の大規模な拡張を進めるSociété du Grand Paris(SGP)と5G機器供給に関する契約を締結。現地で新たに建設される4つの路線にプライベート5G網を導入する。SGPは「Grand Paris Express」と呼ばれる全長200km規模の自動運転路線プロジェクトを進めており、4つの新路線の建設と既存路線の延長、68の新駅の建設および駅周辺の開発を計画している。ノキアは2020年始め、SGPと3つの新路線へのプライベートLTE導入に関する契約を締結していたが、今回の契約はこれに続くものとなる。同社はこれら新路線に5G対応のIP/MPLSマルチサービス、モバイルコア、RANシステムを供給する見込み。これらの機器は、駅間の業務通信やすべての駅や路線、整備施設などの屋内・屋外での接続性実現に活用されるという。また、IP/MPLS通信網は高速バックボーンを提供し、業務効率や安全性、旅客体験の向上に役立てられるとのこと。

原文:https://www.datacenterdynamics.com/en/news/nokia-secures-paris-metro-5g-private-network-deal/

原文:https://enterpriseiotinsights.com/20221208/private-networks/nokia-gets-private-5g-gig-on-grand-paris-express-four-lines-68-stations-200km-of-track

原文:https://www.mobileworldlive.com/featured-content/home-banner/nokia-bags-paris-metro-private-network-kit-deal/

ノキア、ポルトガルに新たな5G/6G研究開発拠点を開設【.thefastmode 11/29】

フィンランドのノキアは11月28日、ポルトガルのアマドーラにあるキャンパス内に5Gおよび将来の6G技術に取り組む新たな研究開発拠点の開設を発表した。この拠点では、今後2年以内にソフトウェアエンジニアやプロダクトオーナー、テックリードなど約100名を雇用し、モバイル通信網を支えるソフトウェアの開発に注力するという。同社はポルトガルにR&D拠点を開設した理由について、活気のあるテクノロジーエコシステム、高度なスキルを持つ人材プール、国の安定性、欧州にあることなどに言及。ノキア・ポルトガルは、アマドーラおよびアヴェイロにある拠点を通じて世界的に重要なイノベーションハブとなっており、世界の大手通信事業者のブロードバンド網を遠隔で管理するサービスセンターも保有しているという。ノキア・モバイルネットワークスのプレジデントを務めるTommi Uitto氏は新拠点について「無線通信の未来へのノキアの継続的な投資を示すもの」とし、「イノベーションの中枢となり、当社の5G技術におけるリーダーシップを強化し、6Gのパイオニアになるという野望の実現に貢献する」とコメントしている。

原文:https://www.nokia.com/about-us/news/releases/2022/11/28/nokia-to-open-new-5g-and-6g-research-and-development-center-in-portugal/

原文:https://www.thefastmode.com/investments-and-expansions/29187-nokia-to-open-new-5g-6g-r-d-center-in-portugal

原文:https://www.rcrwireless.com/20221129/6g/nokia-opens-new-facility-portugal-focus-5g-6g