海外の5G動向【2023年1月度】

国内におけるローカル5Gでの「広域利用」については、意見の集約に時間を要したが、「共同利用」という形で制度化に向けた準備が進められている。これは一つの基地局と複数のユーザーの自己土地を一定の条件のもとで共同利用区域として認める、というものだ。エリアの「飛び地」はできないが、まとまった区域であれば、俄然ローカル5Gを使いやすくなる。これに加え3GPPのRelease15に準拠した安価なチップセット等の流通が始まると、ローカル5Gの普及は急加速する可能性がある。一方、Beyond 5G/6Gがまだ構想レベル、ということを考えると、現場に適用できる可能性が高いローカル5G関連研究の最先端は「ミリ波」にシフトするだろう。2023年、日本はミリ波の実装に関する最先端研究で世界をリードできる余地がある、と考えられる。

以下、2023年1月の世界の5G・ローカル5G(および6G)の動向をお伝えする。


ノキア、スペイン主要鉄道ターミナルへの5G導入で現地のCellnexと協力 【rcrwireless 1/30】

スペインの国営鉄道インフラ事業者であるAdif(Adif Alta Velocidad)は1月19日、ノキアおよび現地通信インフラ事業者のCellnexとプライベート5G・パブリック5G網構築に関する2,050万ユーロ(約29億円)の契約を結んだことを発表した。新たな契約は、ノキアがCellnexの小会社であるTradiaとの共同ピッチで獲得したもの。期間は5年間で、鉄道貨物輸送のデジタル化や関連プロセスの自動化、コスト削減が主な目的だ。Adifはスペイン国内で46の鉄道駅や3,762kmの高速鉄道用線路、11,780kmの普通鉄道用線路を保有・管理する事業者。ノキアとCellnexは、Adifがマドリードやサラゴサ、バルセロナ、バレンシア、セヴィージャ、ビルバオなど10ヶ所で運営する物流ターミナルに2300MHz帯を使用したローカル5G網を配備する計画。また、各ターミナル周辺とターミナル間の鉄道路線を結ぶパブリック5G網も整備する予定で、この5G網は通信事業者が共有で利用可能になるという。

原文:https://www.cellnex.com/news/cellnex-nokia-will-deploy-5g-network-adif-logistics-centres/

原文:https://www.rcrwireless.com/20230130/private-networks/cellnex-nokia-win-e20-5m-deal-to-build-private-and-public-5g-at-10-spanish-rail-terminals

プライベート5G、導入本格化は2024年以降か(ABIリサーチ報告書)【computerweekly 1/13】

調査会社ABI Researchは先ごろ、2023年のテクノロジートレンドに関する新たなホワイトペーパー「74 Technology Trends That Will—And Will Not—Shape 2023」を公開した。この報告書の中で、プライベート5Gの本格的な普及が2024年以降になるとの見方を示している。ABI Researchのシニア5GマーケットアナリストであるLeo Gergs氏によれば、現在の5Gチップセットはすべてが3GPPの「Release 15」をベースにしたものだという。一方、URLLC(Ultra-Reliable and Low Latency Communications、超高信頼低遅延通信)やTSN(Time-Sensitive Networking、高リアルタイム通信)といった重要な5G機能は2020年の「Release 16」で標準化されており、対応チップセットが市場に投入されるのは2023年末になる見込みだという。
Gergs氏は「産業や製造などの屋内アプリケーション向けのローカル5Gでは、高い可用性と信頼性、ある程度の低遅延が必要」とし、「現時点で市場にあるチップセットではそれが実現できない」とコメント。「Release 16」対応の産業用デバイスが大規模に入手可能になるのは2024年第1四半期になるとし、これによりデバイスコストが低下し、プライベート5Gの導入が加速すると予想している。

原文:https://www.computerweekly.com/news/252529143/Tech-firms-add-to-private-5G-offer-but-ABI-warns-of-no-mass-take-off-in-2023

原文:https://go.abiresearch.com/lp-74-technology-trends-that-will-and-will-not-shape-2023

原文:https://www.fiercewireless.com/private-wireless/chips-are-holding-back-5g-private-wireless

エリクソン、5Gネットワークスライシングを活用したスマートパトカー導入で台湾FETと協力【fiercewireless 1/10】

スウェーデンのエリクソンは1月10日、、5G SAネットワーク上のネットワークスライシング機能を活用した新たなスマートパトカーのユースケースを台湾で開発したと発表した。現地通信大手のFar EasTone Telecom(FET)との協力によるプロジェクトで、これらのスマートパトカーは2022年12月から現地の高雄市警察署で稼働しているという。エリクソンによれば、この「5G Smart Patrol Car」ソリューションは主に盗難車のナンバープレート認識に活用されているとのこと。各パトカーは高解像度の撮影装置と専用のアプリケーションを搭載し、AI画像解析によって盗難届が出されている車を特定するという。
また、将来的にはコンサートやサッカーの試合など、多くの人が集まる公共の場での犯罪検知にも活用される見込みとなっている。同社は新たなユースケースについて「公共部門のミッションクリティカルなアプリケーションを実現する高度な5G機能を実証するもので、両社の20年にわたる戦略的パートナーシップの新たなマイルストーンとなる」としている。

原文:https://www.ericsson.com/en/press-releases/2/2023/1/fet-5g-smart-patrol-in-kaohsiung

原文:https://www.fiercewireless.com/tech/ericsson-deploys-network-slicing-smart-patrol-car-taiwan

トレンドマイクロ、5G/プライベート5G向けサイバーセキュリティの小会社を設立【scmagazine 1/5】

サイバーセキュリティ大手のトレンドマイクロは1月5日、エンタープライズ向けの5Gネットワークセキュリティにフォーカスした新たな小会社「CTOne」の設立を発表した。CTOneは、ローカル5G網向けにエンドツーエンドのセキュリティソリューションを提供するほか、企業が5G関連技術を導入する際のサイバーリスク軽減を支援するため、O-RANおよびエッジコンピューティングのセキュリティソリューションも開発する。
トレンドマイクロは新会社設立の理由について「組織がローカル5G網における新たな脅威により効果的に対抗するためのリソースを統合する必要があるため」と説明。「CTOneは、業界特有のアプリケーション環境のデジタルレジリエンスを強化し、プライベート5Gネットワーク環境におけるアプリケーションの安全な実行と、ネットワークからエンドポイントまでの包括的なセキュリティ保護を提供する」としている。調査会社Grand View Researchの報告書によれば、2021年の世界のプライベート5Gネットワーク市場の規模は13億8,000万ドルで、2022年〜2030年にかけて年平均成長率(CAGR)49%で拡大すると予想されている。

原文:https://www.prnewswire.com/news-releases/trend-micro-announces-new-subsidiary-for-5g-cybersecurity-301713874.html

原文:https://www.scmagazine.com/news/emerging-technology/trend-micro-creates-ctone-a-new-subsidiary-focused-on-5g-security