海外の5G動向【2023年３月度】
繋がる/繋がらない、という議論はもはや終了し、海外では「5G as a service」という言葉に代表される形で、具体的なサービスの種類や内容、そしてそのパフォーマンスに関する話題が中心になりつつある。アプリケーションが話題の中心、ということだ。自動化・映像・AI・IoTが主たるキーワードだ。一方、ミリ波に関する話題を海外から集めるのは困難という状況は相変わらずだ（海外でミリ波に熱心なのは米国だけ、と推定されている）。ここは逆に日本が、品質の高いRFチップを生産できる企業を擁するということも含め、世界的に大きなアドバンテージを取れる可能性があると予想することもできるだろう。
以下、2023年３月の世界の5G・ローカル5G（および6G）の動向をお伝えする。
Betacom、プライベート5Gを活用したAI監視システムを発表【rcrwireless 3/21】
ローカル無線インフラを手がける米Betacomは3月21日、ローカルLTE/5G網で動作するAI監視ソリューション「Betacom Perimeter Surveillance Solution（Betacom PSS）」を発表した。スウェーデンのビデオ監視システム企業であるAxis Communications、米サイバーセキュリティソフトウェア企業のEvolonと共同開発したこのソリューションは、空港や倉庫、製造施設などでの利用を想定したもので、従来の有線または公衆無線ソリューションに比べて極めて迅速かつ低コストで導入できるという。Betacom PSSは、同社のマネージドローカルLTE/5GプラットフォームにAxisのセキュリティカメラ、Evolonの画像検出ソフトウェアを組み合わせたもの。24時間365日体制で物理的脅威を検知するもので、導入コストは有線ソリューションに比べて最大70%低く、既存の監視・制御システムとの統合も可能だという。BetacomのJohna Bjorklund CEOは新たなソリューションについて「当社の高性能な5G as a serviceの自然な発展の形であり、急成長するパートナーのエコシステムを活用し、ますます増える空港や製造、倉庫/物流などの顧客基盤に利益をもたらすもの」とし、「ローカル無線網を活用した重要なアプリケーションは日増しに増加しており、有線およびレガシー無線網からの切り替えの利点も着実に明らかになりつつある」とコメントしている。
原文：https://www.betacom.com/perimeter-surveillance-solution/
インドのHFCL、プライベート5Gソリューション提供でマイクロソフトと協業【prnewswire 39】
インド通信機器メーカーのHFCLは3月９日、エンタープライズ向けローカル5Gソリューションの提供でマイクロソフトと協業することを発表した。新たな統合型プライベート5Gソリューションでは、IoTやクラウド、エッジコンピューティング、AI、アナリティクスなどの最新技術を活用し、製造や小売、鉱山、教育、防衛、鉄道、スマートシティなどの業界の変革を支援する。両社はすでに、HFCLの5G屋内スモールセルとマイクロソフトのAzureパブリックMECを組み合わせたパイロットプログラムを開始。ハイデラバードにある光ファイバー製造工場にローカル5Gを活用したインダストリー4.0ソリューションを導入しており、動画解析と画像処理によるリアルタイムのファイバー欠陥検出システムを構築しているという。HFCLのマネージングディレクターを務めるMahendra Nahata氏は今回の協業について「AzureパブリックMECを使用したインダストリー4.0ソリューションをパイロットプログラムとして自社工場の導入できたことを嬉しく思います。このプログラムの教訓やベストプラクティスは、DXに取り組む製造業やその他の様々な業界にプライベート5Gソリューションを展開するためのプレーブック（戦略書）として機能するでしょう」とコメントしている。
IBMとノキア、プライベート5Gマネージドサービスで協力【 techrepublic 3/8 】
IBMとノキアは先ごろ、バルセロナで開催された「Mobile World Congress 2023」の中で、IBMの分散クラウドサービス「Cloud Satellite」を活用した「シームレスでシンプルな」プライベート5Gマネージド・サービスの提供で協力することを発表した。新たなサービスでは、ノキアが5G網や自営無線に関する専門知識を提供し、IBMが自動化やAI、ハイブリッドクラウドに関する業界横断的な知見を提供するという。今回の計画は、両社が2020年に発表したパートナーシップを土台にしたもの。両社は当時ノキアのOpen Edgeハードウェアプラットフォーム上でのIBMの「Cloud Satellite」の動作検証を実施していた。IBMによれば、新たなサービスはエッジ領域でのイノベーションを促進する顧客企業に対して、レジリエンスやパフォーマンス、セキュリティ、コンプライアンス機能を提供するという。また、両社はプライベート5G環境の設計から自動構築、即時接続、運用、監視までを可能にする通信サービスプロバイダー向けの統合管理スタックの開発でも協力するとしている。
原文：https://www.techrepublic.com/article/ibm-nokia-private-5g-service-2/
原文：https://www.computerweekly.com/news/365531810/MWC-2023-IBM-Nokia-strike-private-5G-partnership
原文：https://www.webpronews.com/ibm-and-nokia-to-deliver-private-5g-environments/
HPE、プライベート5G事業強化にイタリアのAthonetを買収【sdxcentral 3/3】
ヒューレット・パッカードエンタープライズ（HPE）は先ごろ、プライベートセルラーネットワーク技術プロバイダーであるAthonetの買収を発表した。Athonetのソフトウェアを傘下のAruba Networksのプライベートネットワーク・ポートフォリオに統合し、Wi-Fiの大容量と5Gのカバレッジおよびモビリティを組み合わせる計画だという。Athonetは、4Gおよび5Gのモバイルコアソリューションを世界中の顧客に提供するイタリア企業。大手携帯通信事業者や病院、空港、港湾、公共事業、公安機関など幅広い業界に450以上の顧客を保有している。HPE WirelessCTOを務めるStuart Strickland氏は「当社は長年、プライベートセルラーネットワークコア企業と提携したいと考えていた」とし、「当社と同じようなビジョンを持ち、公共の基幹ネットワーク指向ではなく、プライベートネットワークを念頭に置いて技術を開発している企業を探した」とコメントしている。Strickland氏によれば、この統合の主要なターゲットは既存のAruba無線LAN（WLAN）の顧客になるといい、SD-WANを含むWLANのソフトウェアコンポーネントはプライベートセルラーネットワークと統合される予定だという。
原文：https://www.thefastmode.com/solution-vendors-m-a/30670-hpe-acquires-private-5g-company-athonet