海外の5G動向【2023年７月度】
医療分野におけるミリ波（mmW）の導入、プライベート5Gとキャリア5Gを1枚のSIMでコントロール（複数のネットワークをコンパクトにハンドリング）、アプリケーションを主役にするためのフルマネージドサービス、Beyond 5Gを丸ごとパッケージで提供するサービスの開始、など、どれをとっても海外事例は日本国内を先行している。特に5.5Gを「Beyond 5G」と称する中国・ファーウェイの動きは数年前から報道されていたが、いよいよ現場に、それもかなり使いやすい形で導入されるようだ。
以下、2023年７月の世界の5G・ローカル5G（および6G）の動向として、これらの詳細をお伝えする。
クリーブランド・クリニック、ベライゾンのプライベート5Gを配備した最先端の病院を開設 【healthcareitnews 7/24】
米民間病院のクリーブランド・クリニックは7月11日、オハイオ州レイク郡メンターにプライベート5Gを配備した最新病院「クリーブランド・クリニック・メンター病院」を開設した。新たな病院は、入院期間が短く、自宅でのフォローアップケアが中心の患者向けに設計されており、診察室から手術室まで患者中心の体験を提供するという。メンター病院には、ベライゾンビジネスがエリクソンのプラットフォームとミリ波を活用したプライベート5G網を導入。救急部門には遠隔医療ロボットが導入されており、院内には情報提供や教育のためのキオスク端末が設置されている。また、病室にはバーチャル診断を支援する高解像度カメラ、テレビや映画、ゲーム、インターネットなどのインフォテイメント端末などを配備。この他、高速通信網は資産追跡（アセットトラッキング）にも利用されており、将来的には手術や画像診断、患者教育へのAR/VR技術の活用も期待されている。クリーブランド・クリニックのCIOを務めるMatthew Kull氏は「このコラボレーションは、完全にデジタル化された病院インフラという我々の長期的ビジョンをサポートするもの」とし、「5Gの高帯域幅を提供できれば、我々の施設はより効率的になり、患者が（退院して）自宅でケアを受ける時の診療レベルの継続性を高め、介護者と患者の全体的な体験をより豊かなものにできるはず」とコメントしている。
原文：https://www.healthcareitnews.com/news/cleveland-clinics-new-mentor-hospital-5g-mmwave-test-bed
原文：https://www.fiercehealthcare.com/health-tech/verizon-cleveland-clinic-team-new-hospital-5g-enabled
Orange Business、フランス国内でハイブリッド型プライベート5Gサービスを開始【mobileeurope 7/17】
仏通信大手のオレンジの法人向け部門であるOrange Businessは先ごろ、同社のパブリックネットワークとプライベートネットワークを組み合わせたハイブリッド・プライベート・モバイル通信ソリューションの提供開始を発表した。新たなソリューションは、仏アルクイユにあるオレンジの研究施設でトライアルが進められてきたもの。ネットワークスライシングやエッジコンピューティング、ローカルデータのブレークアウトなどを組み合わせ、1枚のSIMカードでプライベート/パブリックの両ネットワークに同時アクセスでき、アプリケーションやユースケースに応じてデータフローを適切なネットワークに誘導することができるという。オレンジはこのハイブリッドネットワークについて「多くの用途が想定される」と説明。スマートフォンやタブレット、IoTセンサー、モニター、ヒューマンマシンインターフェース、自律走行車など、様々な産業機器やモバイル端末を接続するアプリケーションを一例に挙げている。
Orange Businessのスマートモビリティサービス担当SVPを務めるValérie Cussac氏は「既存の通信網をハイブリッド・プライベート・モデルに進化させることで、生産の最適化や現場スタッフの経験の向上、技術管理面での大きなメリットが期待できる」とし、「オレンジはオペレーターとインテグレーターという2つの立場からの専門知識を活用し、顧客の変革をサポートしていく」とコメントしている。
原文：https://totaltele.com/orange-business-to-offer-hybrid-private-5g-in-france/
原文：https://www.mobileeurope.co.uk/orange-completes-hybrid-public-private-5g-network-trial/
Docomo Business、香港でミリ波を活用したマネージド・プライベート5Gサービスを開始【rcrwireless.7/6】
ドコモグループの法人事業ブランドであるDocomo Businessは7月６日、香港で初となるエンドツーエンドのフルマネージド型プライベート5Gサービスを開始したと発表した。新たなサービスは、高速のデータ転送や超低遅延、大容量通信などが特徴の極めて安全性の高いデジタルインフラの構築を実現するという。同社によれば、新サービスは26GHz～28GHzのミリ波帯を使用して提供されるとのこと。香港の企業は、アップリンク中心のIoTや、単一の無線ネットワーク上で動作するミッションクリティカル（VoIP、テキスト、ビデオなどのプッシュ・ツー・エブリシング）なアプリケーションへの高い需要に対応するためのプライベート5G網の構築が可能になるという。NTT香港のCRO（最高収益責任者）を務めるStephen Tsang氏は「エッジデバイスの需要が拡大し続ける中で、当社のプライベート5Gネットワークサービスは企業が新たなビジネスチャンスを開拓するための加速装置になると考えています」とし、「プライベート5Gの採用が増加することで、香港はIoTイノベーションのゲートウェイとしての地位をさらに高め、強固なイノベーション・テクノロジーハブとしての地位を確立するでしょう」とコメントしている。
原文：https://www.rcrwireless.com/20230706/private-5g/docomo-launches-managed-private-5g-service-hong-kong
原文：https://sg.finance.yahoo.com/news/docomo-business-hong-kong-first-013000411.html
原文：https://connect.services.global.ntt/docomobusiness_private5G_HongKong
5.5Gの商用展開を見据えるファーウェイ、2024年中にも機器一式を発売へ【techwireasia. 7/1】
中国のファーウェイは6月29日、MWC上海2023の5G Advanced Forumの中で、2024年に商用5.5Gネットワーク機器一式を発売すると発表した。あらゆる業界関係者と協力し、5.5Gの商用展開に備えるという。5.5Gは「Beyond 5G」または「5G Advanced」とも呼ばれる5Gから6Gに移行するまでの過渡的な技術。同社によれば、5.5Gは標準的な5Gからネットワーク性能が10倍向上し、IoTデバイスの高速化、より効率的な製造・輸送システム、3Dコンテンツ制作などを可能にするという。また、同社は今回の発表の中で、5.5GコアネットワークにAIネイティブ技術を適用し、ネットワーク性能と可用性を継続的に向上させる研究を進めていることも明らかにした。これにより、AI機能をネットワークの末端にまで行き届かせることが可能になり、様々な産業により良いサービスを提供できるようになるという。中国は5Gサービスの開始こそ米国や韓国に半年後れを取ったものの、政府主導の取り組みで5G展開を加速。同国の5Gユーザー数は2023年４月末時点で6億3,400万人に到達し、基地局数も273万件を突破。いずれも世界全体の約6割を占める規模となっている。
原文：https://www.huawei.com/en/news/2023/6/5-point-5g-commercial-fullset-equipement
原文：https://techwireasia.com/2023/06/mobile-world-congress-2023-and-everything-huawei-announced/