海外の5G動向【2023年9月度】
ロシアによるウクライナ侵攻は、世界の安全保障環境のみならず、情報通信環境や半導体、そしてサプライチエーンの再構築などを含めた枠組みの変更を迫ることになった。特にプライベート5Gについては、それがようやく普及期に達してきただけにその軋轢も目立つようになりつつある。現時点でのプライベート5Gの海外動向については、5GMF企画委員会ミリ波普及推進アドホックにて作成の5GMF白書「ミリ波普及による5Gの高度化2.0版」の「2-2 各国(海外)」に詳しいので、参照いただければ幸いである。
以下、2023年9月の世界の5G・ローカル5G(および6G)の動向として、これらの詳細をお伝えする。
ドイツテレコムとマイクロソフト、新たなプライベート5Gサービス提供で協力【 telekom 9/13 】
ドイツテレコムは9月13日、マイクロソフトと協力した新たなプライベート5Gソリューション「Campus Network Smart」を発表した。新たなソリューションは、マイクロソフトの「AzureプライベートMEC(マルチアクセスエッジコンピューティング)」上に構築されており、信頼性が高く、セキュアで複数の場所で運用可能なプライベート通信網を顧客に提供するもの。ドイツテレコムの産業向けプライベート5Gサービスのポートフォリオを補完するもので、クラウドベースでスケーラブル、従量課金制のモデルを採用している。両社は昨年、ドイツのボンにあるラボ環境でこのソリューションのテストを実施。また、すでにドイツの大手製薬会社によるフィールドトライアルも成功しており、ARグラスを使用した遠隔保守など、様々なユースケースがテストされてきたという。ドイツテレコムの法人顧客担当マネージングディレクターを務めるHagen Rickmann氏は同ソリューションについて「コストと労力の両面でキャンパスネットワーク導入の障壁を下げるもの」とし、「すでにMicrosoft Azureを活用する顧客や中小企業の新規顧客などにとってメリットがある」とコメントしている。
クアルコム、アップルとの5Gモデム供給契約を3年間延長【 the verge 9/11 】
米チップメーカーのクアルコムは9月11日、アップルとのスマートフォン向け5Gモデムの供給契約を2026年まで延長すると発表した。米アナリストやクアルコム関係者はこれまで、アップルが2024年から自社開発の5Gモデムを使用すると予想していたが、この開発の遅れが指摘されている。クアルコムによれば、2024年〜2026年に発売されるアップル製スマートフォンが新たな契約の対象となるとのこと。ただし、2026年には、アップル製スマートフォンに搭載されるモデムチップ全体に占めるクアルコム製チップの割合は20%まで減少する見込みだという。アップルはここ数年、スマートフォン向け5Gモデムの内製化に注力。2019年にはインテルのスマートフォンモデム事業の大部分を買収していたほか、2021年にはiPhone向け5Gモデム生産のために台湾のTSMCと交渉を進めているとの話が報じられていた。この話題に触れたCNBCは、クアルコムの2022年度の売上のうち約21%がアップルによるものとするUBSの見積もりを紹介。同社が重要な顧客を維持したと指摘した。なお、クアルコムはアップルから携帯電話の特許ライセンス料も受け取っており、この額は2022年には約19億ドル(約2,800億円)に達したと見積もられている。
原文:https://www.rcrwireless.com/20230912/chips/qualcomm-apple-extend-5g-modem-agreement-for-three-years
原文:https://www.theverge.com/2023/9/11/23867918/apple-iphone-5g-modem-chip-qualcomm-deal-2026
ノキア、タイでのエンタープライズ向けプライベート5G提供でNTTと提携【 telecoms 9/1 】
フィンランドのノキアは8月30日、タイでのプライベート5Gソリューションの提供でNTTと提携することを発表した。タイ全土のビジネスパークにプライベート5Gを導入し、自動化やロボット活用、その他のDX関連の取り組みに貢献する。今回の提携により、NTTはノキアのローカル無線ソリューション「Nokia Digital Automation Cloud(DAC)」とエッジソリューション「Nokia MX Industrial Edge(MXIE)」のタイ国内におけるリセラーとなる。製造や鉱業、ヘルスケア、教育など、タイ国内の約320万社以上の企業を顧客に想定しているという。ノキアはこの提携について、「生産性や業務効率、労働安全性など、タイのインダストリー4.0関連の取り組みを飛躍的に拡大するもの」とし、「様々な産業分野における重要なアプリケーションやユースケースを革新する」と強調。具体的なユースケースについては、ネットワーク監視やデバイス管理のためのデジタルツイン、リアルタイムビデオやIoTストリームによるビデオ分析やマシンビジョン、統合済みの産業用デバイスなどに言及している。
原文:https://telecoms.com/523351/nokia-and-ntt-team-up-for-5g-private-network-push-in-thailand/