海外の5G動向【2023年11月度】

6Gについては中国と韓国、そして台湾の動きが具体的かつ活発だ。中国は、100社近い企業・団体が集結するIMT-2030(6G)推進グループを中心に6G関連の技術開発や標準化に取り組んでおり、2030年頃の6Gサービス商用開始が射程に入っている。一方、昨年末に2.800万人を超える5G加入者を記録した韓国では、すでに2019年にサムスン電子とLG電子が6G研究開発センターを立ち上げ、2021年からは政府としての6G研究開発事業もスタートしている。いずれにしても両国とも、5Gのさらなる普及と併行して、6Gを視野に入れた140GHz以上の高周波数帯域におけるデータ送信実験などをすでに実施している(韓国および台湾の6Gについては下記の記事にて紹介)。

以下、2023年11月の世界の5G・ローカル5G(および6G)の動向として、これらの詳細をお伝えする。


ドイツテレコムとエリクソン、ドイツの軍学校にローカル5G網を導入【 telekom 11/27 】

ドイツテレコムは11月27日、現地の軍大学であるヘルムート・シュミット大学ハンブルク(HSU/UniBw H)にローカル5G網(SA方式)を導入したことを発表。この5G網は、スウェーデンのエリクソンの技術を用いて構築されたもので、様々なデジタルアプリケーションのテストに活用される見込み。ドイツテレコムによれば、HSU/UniBw Hは現在、この5G網を用いて工業生産やビジネスプロセスにおける無線接続の使用に関する研究を進めているとのこと。センサーやアクチュエーター、サイバーフィジカルシステムのリアルタイムネットワーク間の相互作用についても研究が行われており、クラウドコンピューティングやAIも応用されているという。また、重点研究分野については、自動化技術やロジスティクス、自律型ロボット、ドローン防衛システム、5Gベースのセーフティ/セキュリティアプリケーションなどが挙げられている。HSU/UniBw HのGerd Scholl教授は「5G SAは、デジタル化と先端技術に関する我々の研究をさらに後押しする」とし、「エリクソンのネットワーク技術とドイツテレコムのキャンパスネットワークにより、イノベーションを研究レベルから実践レベルに引き上げる最高の条件が整いつつある」とコメントしている。

原文:https://www.telekom.com/en/media/media-information/archive/5g-for-university-of-armed-forces-hamburg-1053412

原文:https://www.thefastmode.com/technology-solutions/34034-deutsche-telekom-and-ericsson-power-private-5g-sa-campus-network-for-university-of-the-federal-armed-forces-hamb

原文:https://www.datacenterdynamics.com/en/news/deutsche-telekom-equips-german-armed-forces-university-with-5g-standalone/

台湾のITRI、EUの6G研究プログラムに協力へ 【 focustaiwan 11/14 】

台湾の工業技術研究院(ITRI)は11月14日、欧州連合が出資するテストベッド・プログラム「6G-SANDBOX」と6G研究協力に関するMoU(協力覚書)を交わしたことを発表した。同テストベッドを台湾の通信エコシステムと連携させることで、欧州と台湾の企業間の6G研究における協力を促進する狙いだという。ITRIによれば、両者はJCAS(joint communication and sensing:無線通信システムにセンシング機能を組み込む仕組み)やSMO(service management and orchestration:サービス管理・オーケストレーション)、次世代アンテナ技術のRIS(reconfigurable intelligent surface)などの分野に注力し、6G関連の研究を進めていくとのこと。また、5Gネットワークのさらなる開発や6G技術標準の策定のために、大学や台湾企業への招待も拡大していくという。6G-SANDBOXは2023年1月、汎欧州的な6G実験の場として始動。マラガ(スペイン)やベルリン、アテネ、オウル(フィンランド)などにテストベッドを置いており、欧州連合のスマートネットワーク・サービス共同事業体から出資を受けている。同プロジェクトのコーディネーターを務めるMichael Dieudonne氏は「我々のテストベッドとITRIの実験ネットワークを強固に相互接続することで、6Gアプリケーションのための包括的な研究プラットフォームを構築することを目指している」とコメントしている。

原文:https://www.prnewswire.com/news-releases/itri-and-6g-sandbox-signs-mou-to-propel-6g-innovations-301994580.html

原文:https://focustaiwan.tw/sci-tech/202311140011

原文:https://www.rcrwireless.com/20231114/6g/europe-6g-sandbox-inks-mou-taiwan-itri

オランダ、「3.6GHz帯」をローカル5Gに割り当て 【 totaltelecom11/13 】

オランダ通信当局の国立デジタルインフラ検査局(Rijksinspectie Digitale Infrastructuur、RDI)は先ごろ、現地で「3.6GHz」と呼ばれる複数の周波数帯域のローカル5G免許の申請受付を開始したことを発表。現地の民間企業は、個別または共同で免許を申請でき、独自の5G網の構築が可能になる。RDIによれば、新たに開放されるのは3400~3450MHz、3750~3800MHzの2つの帯域とのこと。これらの周波数帯免許は先着順で発行され、2023年12月1日から有効になる。有効期間は最長で2040年12月31日までの17年間。VRアプリケーションや自動運転車、産業用ロボットなどへの活用を想定しているという。欧州諸国では近年、ミッドバンド(1GHz~6GHz)をローカル5Gに割り当てる動きが活発化。2019年にはドイツが3.7~3.8GHz帯をローカル5G向けに開放していたほか、今年9月には、スイスも3.4~3.5GHz帯の開放(2024年から)を発表。英国でも3.8~4.2GHz帯を政府と民間の共用アクセス免許の対象としている。なお、オランダの3.6GHz帯の残りの周波数帯(3450~3750MHz)については、来年にも国内の携帯通信事業向けにオークションが実施される見込み。

原文:https://totaltele.com/the-netherlands-lines-up-private-5g-spectrum-licences/

原文:https://www.rcrwireless.com/20231109/private-5g/netherlands-opens-3-6-ghz-band-for-private-5g

原文:https://5gobservatory.eu/netherlands-opens-up-3-6-ghz-band-for-local-5g-networks/

韓国政府、500億円規模の6G研究開発計画を発表 【 koreatimes 11/01 】

韓国の科学技術情報通信部(MSIT)は現地時間11月1日、6Gネットワークサービスに関する4,407億ウォン(約500億円)規模の研究開発計画を発表した。この計画には、無線通信やモバイル・コアネットワーク、6G有線通信網、6Gシステム、6G標準化に関連する技術の開発が含まれる。MSITによれば、同計画の目的には、都市型航空交通(Urban Air Mobility、UAM)やVRなど、6G技術と統合した様々なサービスの提供も含まれるとのこと。モバイル・コアネットワーク分野では、クラウドコンピューティングやハードウェアからソフトウェアへの移行に対応し、ソフトウェアベースの次世代モバイル通信網のイノベーションに注力する。また、5Gネットワークサービスの発展を目指した、7GHz~24GHzの周波数帯をカバーするアッパーミドルバンド向けの技術開発にも取り組む。韓国政府は今年2月、2028年に初期の6Gネットワークサービスを商用化する計画を発表。また、6G技術の開発、ソフトウェアベースの次世代モバイル通信網のイノベーション、ネットワーク・サプライチェーン強化などにおける官民協力の促進を目指す「K-Network 2030」戦略を発表していた。

原文:https://www.rcrwireless.com/20231103/6g/korea-announces-development-program-future-6g-networks

原文:https://www.koreatimes.co.kr/www/tech/2023/11/129_362325.html

原文:https://en.yna.co.kr/view/AEN20231101004800320?section=news

ファーウェイ、5.5G技術の最新デモを披露 【 mobileworldlive 10/27 】

中国のファーウェイは10月10日~11日、ドバイで開催された「2023 Global Mobile Broadband Forum (MBBF)」の中で、同社が商用展開を目指す5.5Gネットワークの最新デモを紹介。UAEの大手通信事業者であるduと共同開発した世界初の5.5Gスマートホームヴィラを披露した。ファーウェイの5.5Gは、5Gから6Gに移行するまでの過渡的技術に同社がつけた独自の呼称。一般的には「5G-Advanced」または「Beyond5G」とも呼ばれ、標準的な5Gからネットワーク性能が10倍向上し、下り10Gbps、上り1Gbpsの通信速度、1,000億台のIoT接続に対応するとされている。今回披露されたスマートホームヴィラでは、裸眼3D技術やXR(Extended Reality)、8K動画へのアクセスなど、5.5Gを利用した様々な体験を提供。また、同技術に関連して固定無線アクセス(FWA)が重要な役割を果たすことも示された。ファーウェイの輪番CEOを務めるKen Hu氏は「テクノロジーは急速に変化しており、新たな需要が日々進化している」とし、「我々が世界中で使用しているネットワークは、増え続ける需要に対応するために進化し続ける必要がある」とコメントしている。

原文:https://www.rcrwireless.com/20231026/5g/kagan-huawei-showed-off-5-5g-and-fwa-progress-at-mbbf-2023

原文:https://www.edgemiddleeast.com/brand-view/huawei-driving-the-5-5g-momentum

原文:https://www.mobileworldlive.com/creating-the-next-wave-of-innovation-through-5-5g/