海外の5G動向【2024年1月度】

海外のプライベート5G、特に中国は日本のローカル5Gと比較して、やはり規模(スケール)が大きい。また(以下の記事で紹介するように)ファーウェイの5.5G 、ノキアのNFS(Nokia Federal Solutions)のように数年前から提唱されていた構想が具体的に、そしてほぼスケジュール通りに社会実装を始めているのが特徴だ。そしてその実装は(日本でも当初から想定していた通り)「製造業における工場」が代表的なユースケースになる。ただしここで注意しておきたいのは「製造業における工場」なる現場が実に多種多様である、ということだろう。「何を作る工場なのか」によってローカル5Gがどのように実装されるべきかは(極論すれば)全て異なる。つまり全てがフルカスタマイズになる可能性が高い。一般論としてフルカスタマイズはスケールしにくい。それが前提になるローカル5Gの需要は(日本国内においても)大手キャリア(オペレータ)が実装するプライベート5Gの普及率と比例して増加していくことが予想されるが、プライベート5G市場においてローカル5G市場がどの程度の存在感を示すことができるかは未だ未知数、という状況だ。

以下、2024年1月の世界の5G・ローカル5G(および6G)の動向をお届けする。


ファーウェイとチャイナユニコム、北京で5.5Gの実証実験を開始【rcrwireless 1/30】

中国通信大手のチャイナユニコムとファーウェイは1月25日、北京市内における大規模な5.5Gの実証実験の開始を発表した。この通信網は、北京金融街、北京長距離電話ビル(北京長途電話大楼)、北京工人体育場の3つの主要エリアで継続的なカバレッジの提供を目指すもので、将来中国全土への展開が見込まれる5.5G網と関連アプリケーションのベンチマークとなることが期待されている。ファーウェイの5.5Gは、5Gから6Gに移行するまでの過渡的技術に同社がつけた独自の呼称。一般的には「5G-Advanced」または「Beyond5G」とも呼ばれ、標準的な5Gからネットワーク性能が10倍向上し、下り10Gbps、上り1Gbpsの通信速度、1,000億台のIoT接続に対応するとされている。今回の実証実験では、下り10Gbpsのピークレートや5Gbps以上の連続体感速度を達成。また、ハイバンドおよびローバンドの調整、屋内および屋外での5.5G機器の柔軟な配備を実現し、グラスレス3D、超高精細(UHD)リアルタイム放送システム、VRやAR、XRなどを含む最新アプリケーションへの応用の可能性も示された。ファーウェイの5.5G領域のプレジデントを務めるJohn Gao氏は「5.5Gは低遅延と高い信頼性によって、ワイヤレス生産や柔軟な製造を可能にし、産業のインテリジェント化を加速する」と強調している。

原文:https://www.huawei.com/en/news/2024/1/huawei-largescale-5ga

原文:https://www.rcrwireless.com/20240130/5g/china-unicom-huawei-pilot-5-5g-network-beijing

原文:https://www.telecomreviewasia.com/news/industry-news/3921-huawei-and-china-unicom-beijing-pilot-test-5-5g-network

企業のプライベートLTE/ローカル5G支出、2028年には1兆3,600億円に(Analysis Mason予測)【analysysmason. 1/17】

調査会社Analysis Masonは先ごろ、世界のプライベートLTE/ローカル5Gトレンドに関する最新レポート「Private LTE/5G networks: worldwide trends and forecasts 2023–2028」をリリースした。これによれば、世界のプライベートLTE/ローカル5G網の数は2022年時点で4,000網以上で、2028年には60,000網を超える見込みだという。同レポートでは、プライベートLTE/ローカル5G網を「個々の企業向けに特注で構築され、少なくとも1つのネットワークの要素(パケットコアまたは無線アクセスネットワーク)がオンサイトで展開されるもの」と定義(公共インフラ上で提供される仮想プライベートネットワークは含まれない)。この上で、企業のプライベートネットワークへの支出が2022年の10億ドル(約1,480億円)からCAGR(年平均成長率)48%で推移し、2028年には92億ドル(約1兆3,600億円)まで拡大すると予想している。同社によれば、製造業、運輸業、鉱業などの産業部門が市場を牽引しており、特に製造業は2028年までに導入されるプライベートネットワークの半数以上を占める見込みだという。一方、同社はこのようなプライベートネットワークへの支出が、2028年においても公共ネットワークへの同等の支出の5%未満になると予測。同市場について「ポテンシャルに達していない」とし、「関心は高いものの、デバイスとコストが普及を妨げている」とも指摘している。

原文:https://www.rcrwireless.com/20240123/private-5g/private-5g-will-not-reach-potential-even-as-spending-jumps-800-to-9bn-by-2028

原文:https://www.analysysmason.com/research/content/regional-forecasts-/private-5g-networks-forecast-rma17/

ノキア、米政府機関向けに接続ソリューションを販売する新部門を立ち上げ 【 rcrwireless 1/15】

フィンランドのノキアは1月15日、米政府機関向けにローカル5Gなど様々な革新的接続ソリューションを提供するための新たな事業部門「Nokia Federal Solutions(NFS)」の立ち上げを発表した。同社のグローバルな専門知識と小会社であるベル研究所の技術ポートフォリオを活用し、米政府機関の様々なニーズに対応する。NSFでは、プライベートLTEやローカル5G技術のほか、IPルーティング、光ネットワーキング、マイクロ波ソリューションなどのポートフォリオを活用。また、産業向けエッジ・ハードウェアやドローンなどのソリューションも販売。同部門には、商用通信技術と政府通信技術の専門家、米国政府機関の業務や要件に精通した専門家などが配属されるという。ノキアは昨年12月、軍事通信技術を手がける米システムインテグレーターのFenix Groupを買収。4Gポータブル・ネットワーク・ソリューションの「Banshee」やモバイル・アドホック・ネットワーク(MANET)端末の「Talon」など、広範な防衛技術/ソリューションを確保しており、これらはNSFでも活用される見込みだ。ノキアのモバイルネットワーク担当プレジデントを務めるTommi Uitto氏は、「NSFの立ち上げは、当社の防衛事業の発展における重要なステップであり、米国市場に対する継続的なコミットメントを強調するもの」とし、「当社の高性能で信頼性の高い通信ソリューションが、米国政府と米政府機関の目標達成をサポートすることを楽しみにしている」とコメントしている。

原文:https://www.nokia.com/about-us/news/releases/2024/01/15/nokia-strengthens-us-commitment-with-launch-of-nokia-federal-solutions/

原文:https://www.rcrwireless.com/20240115/private-5g/nokia-intros-federal-solutions-unit-to-sell-private-5g-to-u-s-government-agencies

原文:https://www.thefastmode.com/investments-and-expansions/34588-nokia-launches-nokia-federal-solutions-for-us-government-solutions

ボーダフォン、フォードのスペイン工場にローカル5Gを導入【rcrwireless 12/22】

ボーダフォン・スペインは1月8日、バレンシアにあるフォードのアルムサフェス工場にローカル5G(SA方式)網を導入したことを発表。この5G網は、自社やサプライヤーの生産プロセスの最適化に活用されるという。ボーダフォンの発表によれば、ローカル5Gの導入は、同工場における部品や機能、ソフトウェアの早期検証を可能にする。ボーダフォン・ネットワークのエッジで画像や動画を処理して情報収集することで遅延が短縮され、問題が発見された場合により迅速に組立ラインを停止可能になるとのこと。また、5Gを活用した無線測位システム(RPS)によって、サプライヤーから工場、最終組立ラインに移動する部品の場所・温度・湿度などのトラッキングも実現。なお、この取り組みはスペイン科学イノベーション省の支援を受けており、同省がプロジェクト予算170万ユーロ(約2億7,000万円)のうち最大で42%を出資する。ボーダフォン・スペインのバレンシア地域ディレクターを務めるLaura Galián氏は「このプロジェクトと我々の貢献は、スペインにおけるプライベート5G SAネットワークのリーディング・プロバイダーとしての地位を確立するという当社の戦略に合致している」とコメントしている。

原文:https://www.saladeprensa.vodafone.es/c/notas-prensa/np-vodafone-despliega-redes-privadas-en-la-produccion-de-ford/

原文:https://www.rcrwireless.com/20240108/private-5g/vodafone-deploys-private-5g-sa-network-ford-plant-valencia

原文:https://www.datacenterdynamics.com/en/news/vodafone-deploys-5g-standalone-private-network-at-ford-production-plant-in-spain/

原文:https://5gobservatory.eu/vodafone-spain-deploys-5g-network-at-ford-factory/