海外の5G動向【2024年2月度】
日本国内でも以前から、ローカル5Gの有望な展開先の一つとしてスタジアムやコンサート会場が期待されているが、重要なのは、スタジアム自身がユーザー企業になることが重要なのではなく、彼らは様々な5G関連アプリケーションや機器が活躍するプラットフォームを主宰するポテンシャルを秘めている、ということだろう。この時、通信事業者はスタジアム運営企業と一緒にビジネスを作っていくパートナーという位置付けになる。もしそうだとすると両者に求められているのは、ビジネスとしてのスポーツが果たして日本経済にどのようなインパクトや社会的価値を提供できるのか、を構想することになる。例えば「なでしこジャパンが北朝鮮に勝利してパリ五輪出場を決めた」という事実が果たしてアスリートやファン、その他の利害関係者に与えた社会的・経済的価値がどのようなものなのか、そしてそれは5G/6Gでどのようにアップデート、もしくは全く違った価値や体験を提供することが可能か、そしてそれが日本経済にどう貢献できるかを考える構想力が求められていることになる。通信関連事業者自身が「なぜ私たちはスポーツに熱狂するのか、なぜ日本人を応援するのか」を哲学的に考察することで、優れたサービスモデルが開発されていくのだ。
以下、2024年2月の世界の5G・ローカル5G(および6G)の動向をお届けする。
ベライゾン、北米各地のNHL会場にローカル5Gを導入 【rcrwireless 2/19】
米通信大手のベライゾンとNHL(ナショナルホッケーリーグ)は2月15日、5G分野における複数年のスポンサー契約の更新を発表した。
ベライゾンはNHLの「公式5Gパートナー」、「公式無線サービスパートナー」および「公式モバイルエッジコンピューティングパートナー」を引き続き務めることになる。今回の契約に基づき、ベライゾン・ビジネスは現在、一部のNHLアリーナ(試合会場)にローカル5G網を試験的に導入している。さらに、将来的にはより多くのNHLアリーナにローカル5G網を展開し、試合運営やファン体験を向上させる様々なソリューションを導入する計画だ。ベライゾンによれば、同社のローカル5Gやモバイルエッジコンピューティングが導入されたアリーナでは、様々な業種の企業が新たなソリューションを開発可能になるとのこと。すでに試験導入されている米ニュージャージー州のプルデンシャルセンターでは、審判がリプレイレビューに使用できるiPadやビデオコーチング、コーチおよびビデオコーチとの通信のためのソリューションなどがテストされている。ベライゾン・ビジネスのKyle Malady CEOは「NHLとのパートナーシップは、ネットワーク接続の変革が会場とファンに何をもたらすかを示すものです」とし、「NHLという先進的なパートナーを得たことで、プロホッケービジネスを見据えた際、運営の面でも、試合中の効率やファン体験の向上という面でも大きな可能性が開けます」とコメントしている。
原文:https://www.rcrwireless.com/20240219/venues/verizon-deploy-private-5g-networks-across-nhl-arenas
原文:https://www.lightreading.com/5g/verizon-takes-private-5g-to-the-ice-with-nhl
原文:https://www.verizon.com/about/news/verizon-and-national-hockey-league-renew-us-partnership
ノキアとデル、ローカル5Gやクラウドネットワークで提携 【reuters 2/15】
フィンランドのノキアと米デル・テクノロジーズは2月15日、ローカル5G網の展開とネットワークのクラウド化に関する戦略的提携を発表した。「通信エコシステムにおけるオープン・ネットワーク・アーキテクチャの推進および企業におけるローカル5Gユースケースの推進」が目的だという。
この提携の一環として、ノキアはクラウドにフォーカスしたデータセンター事業「Nokia AirFrame」の既存顧客向け優先インフラパートナーにデルを採用。これらの既存顧客に対して最新通信網のワークロード向けに構築されたデルの「PowerEdge」サーバーへの移行を支援する。一方、デルは企業顧客に推奨するローカル無線プラットフォームとしてノキアのローカル無線ソリューション「Nokia Digital Automation Cloud(NDAC)」を提供する。さらに、両社は今後、NDACとデルのエッジ運用ソフトウェアプラットフォーム「NativeEdge」の統合にも取り組んでいくという。ノキアのNishant Batra CTOは、「デルとの協力関係を継続していくことで、ネットワークへの需要の高まりがもたらす顧客の将来的なニーズに対応し、通信サービスプロバイダーが最新のネットワークをクラウドに拡張する上で役立つソリューションを提供することができる」とコメントしている。
サムスン、6G研究で米プリンストン大と提携 【telecomstechnews. 2/13】
韓国サムスンは2月13日、傘下の研究開発組織であるサムスン・リサーチ・アメリカ(SRA)が6G研究で米プリンストン大学と提携したことを発表した。SRAはプリンストン大の「NextG Initiative Corporate Affiliates Program」の創設メンバーとなり、6G無線網や関連技術に関する研究開発を主導する。プリンストン大の「NextG Initiative」は、同大工学・応用科学部がネットワーキングやセンシング、その他の次世代データインフラを支える主要分野のイノベーション促進を目指して昨年発足したもの。このうち、企業連携プログラム(Corporate Affiliates Program)は学術界と産業界のリーダー、政策立案者の間の協力を促すために最近開始されたもので、SRAのほか、エリクソンやインテル、ノキア・ベル研究所、クアルコム、ボーダフォンなどがパートナーとして参加している。SRAは、これらの企業やプリンストン大の教授陣と緊密に協力し、実世界のニーズやアプリケーションに関する重要な見識を提供していくという。SRAのシニアVPを務めるCharlie Zhang博士は「我々は、プリンストン大の研究者がイノベーションを継続し、破壊的な6G技術を開発することを奨励する」とコメントしている。
原文:https://www.koreaherald.com/view.php?ud=20240213050380
原文:https://en.yna.co.kr/view/AEN20240213002000320
チャイナモバイル、世界初の6Gテスト衛星を打ち上げ 【chinadaily. 2/3】
中国通信最大手のチャイナモバイルは2月3日、6G技術をテストするための世界初の衛星の打ち上げに成功した。宇宙と地上の統合的通信技術を探求する取り組みの重要なマイルストーンとして、現地のChina Dailyが報じている。チャイナモバイルによれば、新たな衛星は同社が中国科学院マイクロ衛星創新研究院(Chinese Academy of Sciences’ Innovation Academy for Microsatellites)と共同開発したもので、6G向けの分散自律型アーキテクチャをホストしているとのこと。国産のソフトウェアやハードウェアを採用しており、軌道上でのソフトウェア再構築、コアネットワーク機能の柔軟な展開、自動管理などに対応。また、高度約500キロの低軌道に投入されており、高軌道衛星と比較して低遅延や高速データ転送などの利点があるという。
中国は2030年までに6G技術の商用化を開始することを目指している。同国の6G推進チームの責任者を務めるWang Zhiqin氏は、同国は2022年に6Gの技術的実験を開始しており、6Gシステムアーキテクチャおよび技術ソリューションの研究を進めてきた、とコメントしている。また、2023年6月には、中国工業情報化部(MIIT)が国内の5Gおよび6Gサービス向けに6GHz帯を割り当てたことを発表していた。
原文:https://www.rcrwireless.com/20240206/6g/china-mobile-claims-launched-world-first-6g-test-satellite
原文:https://www.chinadaily.com.cn/a/202402/05/WS65c078e3a3104efcbdae9c1c.html